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時々思い出して何かを書いてとどめておくだけ

2020年の振り返り

今年はコロナウイルス等,世の中はガラリと一変してしまった。それに対応するように,研究の方も大変であった。 去年と同様に今年も四半期ごとに振り返りつつ,来年の目標をつらつらと書き留めておく。

1 ~ 3月

1月の初めは国内論文誌の条件付き採択の基準を満たすために論文を書いていた。私の論文がダメダメであったせいで,計41個の修正事項がありそれらを締め切りギリギリまで修正していた。なんとか投稿し,無事採択された (論文はこちら)。 また,LRECという言語資源に関する国際会議でも論文が採択された。"At least three reviewers"と書いていたのに私の論文には2人の査読者しかついていなかったのは少し面白かった (論文はこちら)。

その後,共著者の所属するオムロンサイニックエックスという会社でインターンをさせていただくことになった。 この会社はオムロンの本社と切り離された会社で,基本的に研究者に研究に専念させることで新たな価値を生み出していこうとする会社である。インターン分野はコンピュータビジョンとロボティクスが多めであるが,自然言語処理を専門とする人も少ないが受け入れているようだ (私も研究室は自然言語処理を専門とするラボである)。国内外から優秀な方が揃っており,非常に良い経験となったので興味がある方は是非応募してほしい。この時のインターンで行なった内容をコンピュータビジョンのトップ会議であるECCVに投稿した。

4 ~ 6月

インターンを終え,京都に戻ってきた。世にはコロナウイルスが蔓延し始め,私が所属する京都大学でも基本在宅で研究することが原則となった。私は博士課程に入学することを考えていたため,学振 (日本学術振興会特別研究員)に応募するべく書類作りに勤しんでいた。これまでの業績は修士2年としては多く,テーマも大体同じであったため簡単に書けるのではと思っていたものの現実は甘くなく書類作りは難航を極めた。これまでやってきたことはさておき,これからやっていくことをどう分かりやすく,かつこれまでの研究と繋げるのかがとても難しかった。また,こういった書類作りは私にとって初めての経験であったため,何をどういう風に書けば良い申請書であるのかが分からなかったのである。 共著者からのコメントや,学部の頃に所属していた九州大学時代の先輩と議論を重ねながら書類を何度も遂行させて完成度を上げ,なんとか納得いくものを投稿することができた。

また,ECCVに出した論文がRejectと帰って来たため,その論文を修正してCOLINGに投稿した。今回こそは通るであろう,そのようなクオリティになるまで上げられた (と思っていた...)。

7 ~ 9月

博士課程に進学すると前述したが,色々業績などを鑑みて早期修了しても良いのではという話となり,7月末に修士論文を提出した。提出した修士論文こちら。 8月にその公聴会が開かれ,なんとか平和に終わることができ修士課程を1.5年で修了することができた。

9月には学振の結果も帰ってきた。結果は,"二次採用内定"ということで,従来でいう面接対象者となった。 しかし,今年はコロナの影響により面接を行うことはないようで,追加の書類も必要ないため1月上旬まで先送りということとなった。この時,同じく博士課程に進学する友達の学振の結果を聞いたりしたが,誰も採用までは至っておらず「やはり学振は難しいのだなあ」と思ったりしていた。

10 ~ 12月

博士課程の学生となった。4月入学と違ってシームレスな気がする。気がするだけだが。 ちゃんとコツコツとこなして3年で卒業できるようにしたいところである。

また, COLINGの結果が帰ってきた。結果はRejectであった。レビュワーの点数はそこそこ高かったが,1人のReject寄りのレビュワーに引っ張られたというところだろうか。学振もCOLINGもそれなりに良く書けたと思っていただけに,現実の難しさを知る (毎回全て通っている, ように見える人も裏では落ちているのだろうか)。 しょうがないのでCOLINGの原稿を再度修正を行い,IEEE Accessというジャーナルに投稿した。このジャーナルは査読が早く,Accept/Rejectまでのスピードもかなり早いため,そろそろ終わりにしたいと考えていた私にはちょうどよかったのである。ただ,過去の論文を見る限りちゃんとしっかり書かないとRejectであるため,1ヶ月かけて推敲を重ねて投稿した。結果はAcceptであり,なんとか今年中に決着をつけられてよかった..と思う (論文のEarly accessこちら)。

11月には新しい研究のためのアノテーション結果が到着したので,それをもとに考えていたことを実装し始めた。それなりに実験はうまく進んだが,一方完全に思い通りの結果は得られていないため,今後ブラッシュアップしていきたいと思う。

また,学振の結果がクリスマスに帰ってきた。結果は採用であった。ゼミ中の自分の発表の時に帰って来たので,正直気が気でなかったが....。なんとか通ってよかった。しかし,喜んでばかりもいられない。自分の申請書は採用された55人の中でもっともヘボいものであることを自覚し,自ら研鑽していきたいと思う。

成果

今年の研究成果は以下の通りである。2件の査読付き論文誌への採択と,1件の国際会議での発表, そして2件の国内学会での発表である。今年は学振や論文の成仏に追われていて新たに始めた内容で採択というところまでは至らなかったが,今後気を引き締めて取り組んでいく予定である。また,後輩の研究指導も始めており,みんな順調に進めてくれているため,共著も今後増えていくのではないかなと思う。

論文誌

  • Taichi Nishimura, Atsushi Hashimoto, Yoshitaka Ushiku, Hirotaka Kameko, Yoko Yamakata, and Shinsuke Mori. Structure-Aware Procedural Text Generation from an Image Sequence. IEEE Access.
  • 西村 太一, 橋本 敦史, 森 信介. 重要語に着目した写真列からのレシピの自動生成. 自然言語処理 Vol 27 (2).

国際会議

  • Taichi Nishimura, Suzushi Tomori, Hayato Hashimoto, Atsushi Hashimoto, Yoko Yamakata, Jun Harashima, Yoshitaka Ushiku and Shinsuke Mori. Visual Grounding Annotation of Recipe Flow Graph. In Proc of the 12th international conference on language resources and evaluation (LREC2020).

国内学会

  • 西村 太一, 橋本 敦史, 牛久 祥孝, 森 信介. 写真列と構造要素からの手順構造と手順書の同時学習. 言語処理学会第26回年次大会 (NLP2020).
  • 西村 太一, 友利 涼, 橋本 隼人, 橋本 敦史, 山肩 洋子, 原島 純, 牛久 祥孝, 森 信介. レシピフローグラフへのVisual Groundingアノテーション. 言語処理学会第26回年次大会 (NLP2020).

今後

今後もより自身の研究を深めて行く一方,博士卒業後のキャリアパスについても考えていきたいと思う。 研究も好きであるが,個人的には論文を書いて公表することよりもワクワクするようなプロダクトに関わって生きていきたいと思っており,そういったものを作っている会社にインターンで行ければいいなぁと思う (私の専門である言語とビジョンを両方扱うようなマルチメディア処理が絡むと力を発揮できそう..な気がする)。 とはいえあんまり深くは考えていない。とりあえず来年も楽しく研究ライフを過ごして行ければいいなあと思う。